入浴事故の約8割は「浴室内熱中症」
近年、増加傾向にある「浴室内熱中症」について詳しく説明します。

浴室内熱中症とは
近年、日本で起こっている入浴中の突然死の数は、交通事故で亡くなる人の数よりも上回っています。急激な温度差が体に悪影響をおよぼすヒートショックが主な原因ですが、最近は入浴中の熱中症も増えています。
入浴中の熱中症を「浴室内熱中症」といいますが、浴室内熱中症は長時間の入浴で体温が上昇し、血管が拡張して血圧が低下することで起こります。
体温が37℃の人が全身浴をすると、湯温が41℃の時は33分、42℃の時は26分で体温が40℃に達するという研究結果も出ています。体温が40℃を超えると熱中症の症状が出始め、意識障害をもたらします。42.5℃を超えると心室細動や不整脈が起こり、場合によっては意識を失い、溺れて死に至るそうです。
高齢者は感覚が鈍いせいか、熱いことを自覚できないまま危険な状態になるまで長時間、入浴してしまう傾向があります。そのため、熱中症の初期症状が出ていてもその兆候に気付かず、意識障害を起こしてしまうケースが増えています。
バスルームの環境は夏の室内と同じ
バスルームは高温多湿です。夏の室内環境と同じ、と考えるとイメージしやすいでしょう。体内の塩分と水分のバランスが崩れやすいため、体温調節が不十分になる可能性があります。高温で長時間入浴すると体温が上昇し、様々な不調が現れます。
危険な状態になるパターンは2つ
1つは体温が40℃以上になり、意識を失って溺死するものです。実際にあった例を見ていきましょう。高齢女性のAさんは引っ越した当日にお風呂で溺死してしまいました。原因は引っ越してきたばかりということもあり、お風呂の温度設定がよくわからず、45℃の高温で入浴してしまったことでした。気付かぬうちに熱中症を発症し、意識を失って溺死に至ったそうです。Aさんは急激に体温が上昇し、15分ほどで意識を失ってしまった可能性が高いといわれています。
もう1つは高カリウム血症です。人間は体温が42.5℃を超えると細胞が壊れ始め、カリウムが血液中に溶け出して心室細動を引き起こします。すると、血圧が一気に低下し、即座に心停止に至ります。ただし、脳は体温40℃に耐えられないため、その前に意識を失い、溺れて亡くなることが多いそうです。
上記にもありますが、全身浴の場合、体温が40℃に達するまで41℃では33分、42℃では26分かかります。若い人は体温が39℃以上になった時点で大量の発汗、動悸、頭痛といった変化にすぐに気付くので、迅速に対処できます。しかし、高齢者は感覚が鈍くなっているため熱さを感じにくく、症状にもなかなか気付けません。そのため、自覚しないまま意識障害に陥ってしまい亡くなってしまう、というケースが増えています。