高齢者の入浴事故「多いのは溺水や転倒」

油断しがちなのが「溺水」

バスタブ内の水位は低いので油断しがちですが、健康状態によっては溺れることもあります。例えば、体調を崩して意識障害になると自然に前のめりになりますが、これがバスタブの中で起こると、溺水事故につながります。また、移動する際にバランスを崩して頭からバスタブの中に落ちることもあります。
問題なく入浴しているように見えても、職員が目を離した隙に溺れてしまう可能性もゼロではありません。介護施設では同時に複数の利用者の入浴介助を行うことがありますが、そのような状況では全員に気を配ることが難しくなります。通常よりもリスクが高くなるため、慎重に進めていきましょう。

重症化しやすいのは「転倒」

床が湿っていると滑りやすいため、足腰の弱い高齢者には不安定な環境です。動いたり、姿勢を保ったりすることが難しくなり、転倒する可能性が格段に高まるので、注意が必要です。また、床にせっけんの成分が残っていると足との摩擦が減るため滑りやすくなりますし、せっけんを踏んで転んでしまうこともあります。
その結果、バスルームの硬い床に打ちつけたり、壁にぶつかったりしてケガをするケースも少なくありません。入浴中は裸で何も保護するものを持っていないため、衝撃は体に直接伝わり、骨折などの重傷を負うこともあります。高齢者が骨折すると寝たきりになる可能性が高くなります。体を支えるなどして、転倒しないように気を配りましょう。

見逃しやすいのは「やけど・脱水症状」

やけどと脱水症状は、すぐに検知できません。介護士自身が入浴しているわけではないため、シャワーの操作ミスや温度が上がっていることに気付かず、入浴介助を続けてしまうからです。また、機械入浴の設定を見落とし、高温のままバスタブにつかり、全身をやけどするケースもあります。
高齢者は感覚が鈍いので温度が上昇していることや、やけどをしていることに気付いていない可能性があります。また、熱いと感じても急に体を動かすことはできません。その結果、高温のお湯にふれる時間が長くなってしまい、やけどをしてしまうのです。
また、バスルームは高温多湿なので居室にいる時より汗をかきやすい環境です。もともと水分が豊富なので気付きにくいかもしれませんが、たくさん汗をかくと体内の水分が失われ、量が多いと脱水症状につながる危険があります。「気付いた時には遅かった」というケースもあるので、利用者の様子をよく観察し、やけどや脱水症状を起こしていないか確認するようにしましょう。