なぜ高齢者の入浴事故が多いのか？

ヒートショックや浴室内熱中症だけでなく、溺水や転倒事故にも注意が必要です。バスルームはお湯やせっけんで床が湿っていることがよくあります。そのような状態だと足との摩擦が減って滑りやすくなるため、転倒して体を打ちつけたり、壁にぶつかってケガをしたり、といったケースも少なくありません。また、入浴中に体調を崩して意識を失い溺水したり、湯温の上昇に気付かずやけどをしたりすることもあります。さらに、大量に汗をかいた結果、脱水症状を起こすケースも報告されています。

近年増加しているのが、浴室内熱中症です。浴室内熱中症とは、長時間の入浴や高温での入浴によって体温が上昇し、血管が拡張して血圧が低下することで起こる体調不良を指します。体温が40℃を超えると、大量の発汗、動悸、頭痛といった熱中症の症状が現れるため、通常であればすぐに気付けるはずです。しかし、高齢者は皮膚感覚が鈍くなり、熱さを感じにくいため、こうした兆候があってもすぐには自覚できません。その結果、気付かないまま意識を失い、最悪の事態を迎えてしまうことが多いようです。

ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、体にダメージを与える健康被害のことです。血圧の変動や不整脈、失神、頭痛、倦怠感、吐き気などの症状を引き起こす可能性があり、最悪の場合は命に関わることもあります。暖かい部屋からバスルームやトイレなどの寒い場所へ移動した際に発生しやすく、冬場に多発します。若い人に比べて高齢者はヒートショックを起こしやすい傾向があるため、特に注意が必要です。