入浴の効果と事前準備
入浴の主な目的や効果を紹介しながら、入浴介助をスムーズに行うために必要な準備について説明します。

入浴の効果について
まずは、感染症予防です。体が汚れていると細菌が付着し、褥瘡を引き起こす恐れがあります。褥瘡は、体重によって皮膚が圧迫される部位の血流が減少することでできる赤みやただれ、傷などのことです。床ずれともいわれていますが、その状態が続くと感染症につながります。そのため、こまめに入浴して体を清潔に保つことは、褥瘡や感染症の予防に役立ちます。
また、お湯につかると体が温まります。体を温めることで筋肉や関節の緊張がほぐれ、痛みも和らぐため、腰痛や関節痛を抱えている人にも有効です。
さらに、心身機能の向上も期待できます。体が温まって血管が広がると血行が促進されます。体内を循環する血液の量が多いと代謝が高まり、免疫力も向上するため、体の心身機能が活性化します。自律神経の副交感神経も刺激され寝つきもよくなるので、疲労回復にもつながるでしょう。
入浴前の注意点
介助する前に心がけておくべきポイントを4つに分けて説明します。
1つ目は「体調を観察する」です。体調が優れない時に入浴すると、急に体調が変わることがあります。入浴前に利用者の血圧や体温、脈拍、呼吸数を必ず確認しましょう。
2つ目は「食前・食後の1時間は入浴を避ける」です。空腹時に入浴すると水分が不足したり、血糖値が下がったりして、貧血やめまいなどの不調を引き起こす可能性があります。また、食後すぐに入浴すると消化不良を引き起こすため、時間を空けてから入浴するようにしましょう。
3つ目は「体の状態を確認する」です。入浴は体に異常がないか確認するよい機会でもあります。肌の乾燥や湿疹、ただれなどの異常がないか全身をチェックしましょう。
4つ目は「温度の調整」です。湯温だけでなく、バスルームや脱衣所の温度を調整することも重要です。急激な温度変化はヒートショックのリスクを高めるため、バスルームや脱衣所は他の部屋の室温と合わせましょう。もし、温度が低ければヒーターで暖めるなどして対策してください。また、高齢者は感覚が鈍くなっているため、やけどをしてしまう恐れもあります。湯温は40℃に保つようにしてください。
介護士の準備
介助する前に必要なものを準備しておきましょう。
まずは体が濡れないように、防水性と撥水性のあるエプロンと手袋を準備してください。服装は長袖よりも、乾きやすい素材の半袖・半ズボンがおすすめです。入浴介助の際、利用者が転倒しないように床の状態を確認するなどして気を配っていると思いますが、介護士も転倒することがあるので注意が必要です。「バスルームだから」と裸足で介助している人もいますが、滑りやすいので危険性が増します。ゴム製のサンダルやブーツなど滑りにくい靴を履いて介助するようにしましょう。